忙しさと稽古の折り合い —— 村島弘之/剣道歴20年
仕事が立て込むと、稽古の時間は簡単に削られてしまう。
「今日は無理だな」と思いながら、道場の灯りを思い浮かべる夜も多い。
社会人剣士にとって、忙しさは言い訳であり、現実でもある。
稽古を優先できない自分に、どこか後ろめたさを感じることもある。
だが、剣道は量だけで測れるものではなかった。
稽古に行ける日は、限られている。
だからこそ、一振りが軽くならない。
一本一本に、迷いも、覚悟も、すべてを込める。
忙しい時期ほど、基本に立ち返る。
大きく構え、呼吸を整え、間合いを詰める。
派手な技より、崩れない姿勢を大切にする。
稽古に行けない日も、剣道は途切れない。
歩きながら姿勢を正す。
仕事の場で、一拍待つ。
感情を抑え、相手をよく見る。
それらもまた、稽古の延長線上にある。
若い頃は「稽古時間=強さ」だと信じていた。
しかし今は違う。
剣道は、生活の中に染み込ませていくものだと感じている。
忙しさと稽古は、敵対関係ではない。
どちらかを捨てる必要もない。
折り合いをつけながら、剣道を手放さないこと。
それが、社会人剣士の覚悟なのだと思う。
今日も稽古には行けなかった。
それでも、剣道から離れたわけではない。
次に竹刀を握るその瞬間まで、
心は、すでに稽古をしている。
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